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特集 vol.308
壮大なストーリーに魅了される
“大祓“の祝詞「大祓詞」を知っていますか?
夏越の祓が行われた6月30日。みなさんは神社へ行かれましたか? 今回は年に2回の大祓の祝詞「大祓詞」に注目します!

「大祓」は、1200年以上の歴史を持つ浄化の神事


12月と6月、年に2回の晦日の日に行われる大祓。茅の輪くぐりや、人形の授与で大祓に参加された経験がある方も多いのではないでしょうか?

大祓とは、知らず知らずのうちに身についた心身の穢れ(けがれ)や災厄の原因になる罪や過ちを祓い、清めるための神事です。12月31日の大祓は「年越の祓」と呼ばれ、6月30日は「夏越の祓」と呼ばれ神事がありますが、茅の輪くぐりや人形の授与は神社により、神事の数日から1週間ほど前からおこなわれています。

大祓の歴史は大変古く、その起源となったのは、記紀神話に登場するイザナギの禊ぎのシーン。そして大宝元(701)年。文武天皇により編纂された日本初の体系的な法律「大宝律令(たいほうりつりょう)」により、正式な宮中の年中行事に制定されました。


6月下旬の神社で見かける茅の輪くぐりも大祓の行事のひとつ。

奈良時代には、平城宮の正門にあたる朱雀門で大祓の祝詞「大祓詞(おおはらえことば)が読まれ、罪・穢れが祓われていたそう。中世以降は神社の行事として定着し、多くの神社の年中行事となったのです。


最長の祝詞「大祓詞」に描かれる壮大な物語


実は、朱雀門の前で読まれた大祓詞(おおはらえことば)は、一部が省略されていますが今も各神社の大祓の神事で読まれているもの。とても長い歴史があります。さらに、朱雀門で読まれる前から存在していたとも言われ、誰が書いたものなのかも不明と、少々ミステリアスな祝詞なのです。
数ある祝詞のなかでも、もっとも長文であり、文学的価値も優れていることから「祝詞の中の祝詞」とも言われているそうです。


天上の神々も登場する「大祓詞」は、文学として読んでも興味をそそられます。

「大祓詞」のストーリーは、高天原(天上)の八百万の神々が会議をするシーンから始まります。議題は、豊葦原の瑞穂の国(地上・日本)を安らかな国として平和に治めること。
何度も会議を重ねた結果、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の決定で、皇御孫命(すめみまのみこと)が瑞穂の国へ行くことになりました。皇御孫命は、反対する地上の神々の不平や不満を何度も何度も聞き、国造りに協力してもらえるか相談を重ねたところ、ついに瑞穂の国の神々の協力を得ることができ荒れた国土が平穏になったのです。
こうして皇御孫命は、国の中心を都と定め、太い柱を建て屋根には天まで届くような千木を取り付け、荘厳な御殿を作り瑞穂の国を治めました。

記紀神話の葦原中国平定のくだりのようですが、神話では殺人ならぬ殺神があったり力自慢の神さまが登場したりと力で平定していますが、「大祓詞」では対話を重ねて平定するという平和なストーリーに癒やされます。
そして、ここまでが「大祓詞」のバックグラウンドを語ったパート。続けて、人が罪穢れを溜めてしまうことが語られ、皇御孫命がそれを消し去る方法として、高天原の神々のこの祝詞を唱えることを教えてくれるという流れになっています。


祓い清められた罪穢れの行き先は?


「大祓詞」には、祓い清められた罪穢れが、どのようにして消し去られるのかも描かれています。
まず、川にいる瀬織津比売神(せおりつひめ)が高い山低山の上から大海原に流しさり、海にいる速開都比売(はやあきつひめ)が、大きな口でガブガブと飲み込んで海底に沈め、息を吹き出すところにいる気吹戸主(いぶきどぬし)が根の国へ吹き放ってくれ、根の国の速佐須良比売(はやさすらひめ)がどこへとも知れず運び去り消し去ってくれるそうです。
最後に、神々へ人間の罪穢れを祓い清めてもらえるよう祈りを捧げ、幕を閉じます。


川から海へ、海の底から根の国へと罪穢れが神々の力で運ばれていく様子が描かれます。

こんな情緒豊かなストーリーが、大祓では神さまに溯上されているのです。
神事に参加できる神社も多いので、ぜひ直に大祓詞を聞いてみてはいかがでしょうか?