1. 【東京・台東区/五條天神社】
医療関係・薬剤師の方々にも人気
2. 【宮城・加美町/薬莱神社】
県指定無形民俗文化財「三輪流神楽」が伝わる
3. 【京都・京都市東山区/八坂神社】
祇園の町のシンボル的存在
4. 【奈良・桜井市/大神神社】
聖なる山を直接拝する、古代信仰が息づく
5. まだある!疫病退散のご利益がある神社
まずは東京の神社から。上野公園にある五條天神社(ごじょうてんじんじゃ)の御祭神は、大己貴命(おおなむじのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)です。日本武尊(やまとたけるのみこと)が東夷征伐のため上野忍が岡をお通りになられたとき、この2柱の神さまに御加護をいただいたことを感謝して、この地に祀ったと伝わっています。
大己貴命と少彦名命はともに、日本中に医薬の作り方や病の治し方を伝えたとされる神さまです。毎月10日には「医薬祭」が行われ、無病息災や病気平癒の祈願をします。
また、毎年6月末日と12月末日には穢れをはらい無病息災を祈る「大祓式(おおはらえしき)」という儀式も行われます。大祓式の日を挟んだ1週間ほどの期間、社殿の前に大きな茅の輪(ちのわ)が設けられ、茅の輪くぐりに訪れる人々でにぎわいます。菅原道真公も合祀されているので、医薬学を志す学生にも人気の神社です。
薬莱神社(やくらいじんじゃ)も、大己貴神(おおなむちのかみ)と少彦名神(すくなひこなのかみ)をお祀りしています。そのなりたちには、疫病退散と深いかかわりがあります。
奈良時代の武人・大野東人が、出羽国への道を作っていたときのこと。悪疫が流行し、多くの兵士や人夫が病の犠牲になってしまいました。そこで薬莱山上に医薬の守護神である大己貴神と少彦名神を祀って祈ったところ、病気が鎮まり、工事も無事に終えられたのだといいます。
薬莱山は標高553mほどですが、山頂からの眺めもよく、地元では「加美富士」とも呼ばれています。山頂は見晴らしも抜群。運が良ければ初日の出をみることもできます。奥宮に参拝すれば、新年を清々しい気持ちで迎えられそうですね。
京都の夏の風物詩、祇園祭。平安時代に京都各地で流行していた疫病を神さまに鎮めてもらおうとはじまったお祭りです。開催しているのは八坂神社(やさかじんじゃ)。京都のメインストリートのひとつである四条通東端にある、あでやかな西楼門が印象的な神社です。
八坂神社の御祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)。日本各地のさまざまな神社で行われている「茅の輪(ちのわ)くぐり」のルーツといわれる民話『蘇民将来』で語り継がれている神さまともいわれています。
『蘇民将来』とは、こんな民話です。
旅の途中で神さまが宿を請うと、金持ちの弟・巨旦将来は嘘をついて断わりましたが、貧しい兄・蘇民将来は家に泊めて精一杯もてなしました。そのことに感謝した神さまは「のちに疫病が流行るが、蘇民将来の子孫であるといい、腰に茅の輪を巻けば救われる」と蘇民将来に伝えます。おかげで弟をはじめとする皆が疫病に倒れるなか、蘇民将来の家族だけは生き残って繁栄しました。
この民話に出てくる蘇民将来を祀っているのが、八坂神社の境内摂社・疫神社(えきじんじゃ)です。八坂神社の西楼門をくぐると、すぐ目の前に境内摂社の疫神社があります。ここで祇園祭の最後を締めくくる「夏越祭」が行われます。神さまをもてなす心の清らかさで疫病の難を逃れた蘇民将来にあやかって、八坂神社に参拝し、疫病退散を祈ってみてはいかがでしょうか。
古事記や日本書紀には、崇神(すじん)天皇の時代に疫病が大流行したという話が出てきます。疫病で人々が苦しんでいるときに、崇神天皇の夢にあらわれて自分を祀らせるように告げた神さまが、大物主神(おおものぬしのかみ)です。その神託に従うと病が鎮まり、国も安らかになったといいます。この大物主神を御祭神としているのが、大神神社(おおみわじんじゃ)です。
大神神社には、疫病を鎮めることを祈るお祭りがあります。
ひとつは、境内摂社の狭井神社(さいじんじゃ)とともに開催する鎮花祭(はなしずめのまつり)。春の陽気で出てくる災いや病気を鎮めるためのものです。神前にはユリの根と忍冬(スイカズラ)の薬草などが供えられるほか、医薬品メーカーからも多くの奉納品があり、「薬まつり」とも呼ばれます。
もうひとつは三枝祭(さいくさのまつり)です。こちらは、奈良市内にある摂社・率川(いさかわ)神社の例祭。神酒を盛った酒垂笹ゆりの花で飾って神前にお供えするため、「ゆりまつり」とも呼ばれています。
どちらも、701年(大宝元年)制定の『大宝令』で国家のお祭りとして定められていた、由緒正しい祭典です。
大神神社は、記紀にも登場する日本最古の神社のひとつ。長い歴史を誇る神社で、新しい年の健康と幸福を祈ってみてはいかがでしょうか。