東京の桜の名所、飛鳥山公園は東京都北区にある日本初の公園です。
もともとは、江戸時代に娯楽の場として8代将軍徳川吉宗が整備した場所。徳川吉宗といえば、「享保の改革」をおこなった名君として知られています。2002年まで放映されていたロングラン時代劇『暴れん坊将軍』のモデルとしても有名ですね。
吉宗が飛鳥山に桜を植樹したのは享保5年(1720年)。1270本もの桜を植え、庶民に開放しました。江戸時代の桜の名所として知られるのは上野のお山ですが、江戸っ子たちに人気だったのは飛鳥山です。なぜなら、ほかの場所では風紀が乱れるとして禁止されていた酒宴や歌、踊り、そして仮装まで容認されていたからです。飛鳥山を開放した際には吉宗自らがお花見をして、名所になるように宣伝したともいわれています。
「さすが暴れん坊将軍、庶民の味方」と思いがちですが、実は飛鳥山のお花見スポット化は「享保の改革」の一環としておこなわれたもの。「享保の改革」では、当時火の車だった幕府の財政を立て直すため、税制改革も盛り込まれていました。飛鳥山で庶民に楽しんでもらうのは、厳しい政策のガス抜きのような意味合いがあったのでしょう。
なにはともあれ、飛鳥山は日帰りで思い切り遊べる遊楽地として大人気となり、現代のお花見の原型ともなるスタイルが確立されていったのです。
現在の飛鳥山公園には650本の桜が植えられ、ソメイヨシノから遅咲きの八重桜などさまざまな桜が楽しめます。江戸っ子たちのお花見の様子を思い描きながら桜を楽しんだら、飛鳥山公園のすぐそばにある王子神社(おうじじんじゃ)にも足を向けてみましょう。
王子神社は、江戸名所図会にも描かれた江戸の名所。紀州熊野三社から王子大神が勧請されたことから、紀州出身の吉宗公は、この地に紀州ゆかりの神社があることを喜び飛鳥山に桜の名所を作ったそう。この故事にちなみ、立春から立夏の期間限定で「〜幸せを呼ぶ〜桜花守り」も頒布されています。
桜モチーフのお守りは、身につければいつでも春の晴れやかな気分を届けてくれそうです。
王子神社のすぐそばには、王子名物の玉子焼き専門店もあるので、おみやげや花見のお供に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?