桜の季節が終わる頃、鮮やかに咲き誇るサツキ。公園や道路脇の植え込みなどでも、よく見かけます。一見ツツジとそっくりですが、どこが違うのでしょうか。
実はサツキはツツジと同じくツツジ科ツツジ属の植物で、海外では区別されていません。日本では昔からツツジを好んで栽培し、品種改良も行われてきました。特に盛んだったのが江戸中期といわれ、ツツジ・サツキの図解書『錦繍枕(きんしゅうまくら)』も刊行されています。この書のなかでは「春に咲くものをツツジ、初夏に咲くものをサツキ」と区別して紹介していることから、少なくとも江戸中期にはサツキとツツジを区別していたようです。
海外で同一視されているとはいえ、サツキとツツジが違うのは、開花時期だけではありません。たとえばツツジは花が咲いてから新しい葉が育ちますが、サツキは新葉が出てから花が咲きます。またツツジの花はやや大きめで一斉に咲きますが、サツキは小ぶりな花が少しずつ咲いていきます。葉にも違いが。ツルツルとした手触りで光沢があるのがサツキの葉。裏に毛が生えていて柔らかいのがツツジの葉です。ちょっとした違いにもかかわらず別の名で呼ばれていることからも、サツキやツツジが愛されてきた花であることが伝わってきますね。
境内にサツキが咲く神社もあります。そのひとつが備中国の一宮、吉備津神社(きびつじんじゃ)です。桃太郎のモデルとなった神さまが祀られており、桃太郎のお話のもとになったといわれている温羅退治の伝説で知られています。祈願したことが叶えられるかどうかを釜の鳴る音で占う「鳴釜神事」でも有名です。全国唯一の建築様式「比翼入母屋造」の本殿拝殿の美しさも必見です。
そんな見どころ豊富な吉備津神社ですが、特に見応えがあるのが、高台にある本殿へと続く壮大な廻廊です。自然の傾斜を生かして一直線に建てられています。その長さはなんと360m!昔も今も、多くの参拝客を魅了しています。花の名所としても親しまれており、四季折々の植物を楽しめます。5月から6月にかけては、愛らしいサツキの花に彩られ、廻廊が華やかに。参拝者の心までパッと明るくしてくれそうです。