垂れ下がる紫色の花の房が、気品漂う藤。『万葉集』の中にも藤の美しさを詠んだもの、藤の花を恋しい人にたとえた歌などが多数あります。清少納言は随筆『枕草子』の中で「めでたきもの」という、すばらしいと思うものを列記する章の中で、藤と松が奏でる景色を挙げています。
「色あひふかく、花房長く咲きたる藤の花、松にかかりたる」。
藤の長い花房が松に寄り添うように揺れている姿の美しさは、今も昔も人の心をとらえるようです。
藤の花は振袖にたとえられるように、たおやかな女性をあらわした花ともいわれています。
そんな美しい藤を堪能できる「藤祭り」がおこなわれるのは、岡山県和気町の和氣神社(わけじんじゃ)に隣接する藤公園。
足腰の神さまと崇敬を集める御祭神は、奈良時代末期から平安時代初期にかけて国難に立ち向かった政治家・和気清麻呂公。清麻呂公生誕1250年を記念し、1985年に造成されたのがこの公園です。
全国で著名な藤の品種約100種を収集し「日本一の藤公園」を自負することもあり、毎年4月下旬から5月中旬におこなわれる藤祭りには10万人の人出があります。約7000uの敷地につくられた幅7m、総延長500mの藤棚は、この時期2週間ほど、紫・白・ピンクなど多種多様な花を咲かせ、公園や神社は藤の花の香りで包まれます。公園は夜9時まで開園し、藤棚のライトアップもおこなわれます。