「海ーっ!!」と、思わずシンプルな歓声をあげてしまったその場所は、静岡県・清水市にある久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)。徳川家康公の遺命により御遺骸を埋葬するために建てられた神社です。
久能山の標高は216m。駿河湾を背後に山頂までつづら折りに伸びる参道を登れば、冬でも汗ばむほど。息を切らしながら登って見た景色にあげたのが前述の歓声でした。この石段は下の石鳥居から数えて1159段。「いちいちごくろうさん」と覚えられているそうですが、がんばって登った自分に誰もが「ご苦労様」と声をかけたくなることでしょう。
登った先に待っているのは絶景だけではありません。国宝に指定されている総漆塗、極彩色の社殿は、まばゆいほど鮮やか。太平の時代を築いた家康公にふさわしい豪華絢爛さです。日光東照宮(にっこうとうしょうぐう)よりも19年も前に建てられ、江戸時代初期の代表的建築物として知られています。
素晴らしい社殿を参拝したあとは、一ノ門あたりからもう一度景色を堪能してみましょう。海岸沿いをよく見ると、いちごの栽培ハウスがずらっと並んでいることに気づくかもしれません。そう、久能山東照宮の参拝後のお楽しみはいちご狩りやいちごスイーツ。この地で作られる石垣いちごは、100年以上の歴史があります。
石垣いちご創始者の川島常吉は、明治29年(1896年)に久能山東照宮の松平健雄宮司よりいちご苗を託され、温室のない時代に石の輻射熱を使っておいしいいちご栽培に成功したそう。久能山東照宮ともご縁があるいちごなのです。
通称「いちご狩り海岸通り」には50件以上のいちご狩り農家が並んでいます。シーズンの1月〜5月ごろに訪れればいちご狩りが楽しめるのはもちろん、シーズン以外でもジュースやソフトクリームなどの石垣いちごのスイーツを楽しめるお店があります。いまも石垣で栽培されるいちごは、香り豊かで上品な甘さ。予約不要でいちご農家を紹介してくれる店もあるので、気軽に楽しむことができます。「いちいちごくろうさん」の石段をがんばって登った人には、甘酸っぱいいちごが五臓六腑に染み渡るはず。自分へのご褒美にぜひご賞味ください。