静謐な神社とのご対面を楽しみにしていものの、神社に近づくと宴会をしているような賑やかな声。とりあえず上に登ってみると、神社と御神体の大岩の前でまさかのバーベキューの真っ最中!
そういえばここは天岩戸の伝承地。そして御祭神は岩戸を開けた力持ちの神さま天手力男命(あめのたぢからおのみこと)。その宴会は、あたかも岩に籠もったアマテラスを誘い出すための宴が現在に甦ったよう。不思議な光景にクラクラとめまいがするようです。
賑わっている方々を横目に神社に近づくと、参加者の方から声をかけられ事情が判明しました。なんと今日は石割神社の年に一度の例祭の日。毎年4月9日が祭にあたるものの、事情により1日遅れの4月10日に祭をしている真っ最中だったそうです。
さらに、「参拝が終わったら食べて行って!」と声をかけていただきました。毎年、祭の日には、このようにバーベキューをおこない、神さまに献上したお下がり(神饌)として参拝者にも振る舞っているそうです。「そんなアットホームな例祭があるなんて!」と、次々おこることに頭のなかはプチパニックに。
混乱していてもしょうがないので、ひとまず本来の目的である大岩の割れ目を巡る参拝をすることにしました。山梨県神社庁のサイトには、3巡すると「開運が生まれ、神通力をいただく」とも記されています。ただ、最初に拝殿で手を合わせるのか、最後に手を合わせるのかはっきりしたことはわかりません。そこでまた、参加者の方から正しい参拝方法についても教えていただきました。それがこちら。
1.拝殿で一礼して手を合わせたら時計回りに岩の割れ目を通り一巡
2.また拝殿で一礼して一巡。
これを3周繰り返し、最後に二礼二拍手一礼で参拝する。
お知らせいただいた参拝方法で早速石の間を通り抜けようとすると、想像以上の細い隙間でおどろきました。肩幅よりも狭いため、背負っていたリュックを手の下の方に持ち、横向きにカニ歩きしながらくぐりぬけます。
くぐり抜けた先からは、先ほどの祭(バーベキュー)の様子が見下ろせ、山間に香ばしい煙が立ち上っているのが見えました。くるくると3周巡り、神さまへのご挨拶をすませると、再びバーベキューへのお誘いを受け着席してごちそうになることにしました。
「これは甲州ワインビーフ。こっちはチキン。おいしいよー! おにぎり食べる? ビールもあるよ!」
座っているだけで次々と出していただける食事や飲み物に、「こんなにしていただいて・・・」と、ありがたいような申し訳ないような気がしてきます。取材で来ていることをお知らせすると
「この祭もどんどん掲載してね。たくさんの人に来てもらえるといいなー」
との暖かいお言葉もいただきました。
ひとしきりご馳走になっていると石割神社の知られざるお話も次々と飛び出します。大岩の割れ目を抜けた先にある平らな石は神さまが降臨される石なのだそう。
「石に両手を当ててお祈りするとパワーがいただけるといわれているんですよ」
神社の始まりについても教えていただきました。
氏子総代の8代前の方が石割山に猟に出て、獲物を取り逃がしたその日の夜。夢枕に神さまが現れ「お前が仕留めようとしたのは神であったから、今後は山の大岩に祠をつくり祀るように」と言われたそうです。
それ以来、神社として地元で信仰されてきたわけですが、御神威を感じるお話も伝わっています。ひとつは少し前まで岩から水がしみ出し、その水が眼病や皮膚病に効くとして地元では重用されていたこと、そしてもう一つは東日本大震災でも大岩はなんの被害もなかったこと。
「こちらも被害があったので、山の上の大岩が崩れているのではないかと心配していましたが、まったく変わらぬ様子でした。神さまのお力を感じましたね」
いろいろとお話を伺っていると、石割神社が氏子さんたちから本当に篤い崇敬を受け、大切に守られているのが感じられました。興味深いお話ばかりでしたが、みなさんにお礼を告げ、神社の前から山頂に向かうことにしました。
石割山の山頂は神社から徒歩20分ほど。急勾配の山道をぐんぐん登ると、パッと視界が開け富士山と山中湖が表れました。
広場として整備されており、ベンチもあるのでお弁当を食べるのも良さそうです。
ここでひと休みし、下りに再び宮司さんや氏子さんにご挨拶をして下山すると上り始めから3時間が経っていました。
最後に、宮司さんに教えていただいた御朱印の情報をお知らせします。宮司さんは石割神社には不在のことが多いため電話(0555-65-8177)で予約するのがスムーズだそう。受け取りは、ご自宅に伺うか、兼任されている平野天満宮(ひらのてんまんぐう)になるそうです。大変気さくな方で「いつでも電話して大丈夫ですよ!」と仰っていましたが、常識の範囲内でご連絡してみてくださいね。