1. 絶景だらけの長崎の街。その魅力は坂道にあり
2. 長崎七不思議のひとつ「寺もないのに大徳寺」とうたわれる梅香崎神社へ
3. 坂本龍馬も参拝した!?明治維新の志士ゆかりの若宮稲荷神社
4. 締めは長崎の氏神さま“おすわさん”にご挨拶
「オランダ坂」に「どんどん坂」、超急勾配で知られる「変電所の坂」など、長崎には数々の坂の名所があります。名所以外も坂だらけで、長崎湾のまわりにわずかにある平地を除き、四方八方に山が連なり、すり鉢状になっているため少し上ると海が見え、対岸の山が見える変化に飛んだ素晴らしい景色が楽しめるのが特徴です。
階段状の坂も多く、車や自転車でさえ通れない風情のある坂道が多いので、散歩にぴったり、といより散歩するしかない街といえます。そして、こんな坂の街にはなぜか猫もたくさん暮らしているといわれています。坂の景色と猫との出会いを期待しながら、長崎の神社を実際に歩いて巡ったコースをご紹介しましょう。
長崎には、日本三大中華街のひとつ新地中華街があります。そのすぐそばにあるのが梅香崎神社(うめがさきじんじゃ)。中華街でランチのあとにふらっと寄るのにも便利な立地です。
御祭神は菅原道真公。一の鳥居の前の看板によると前身は大徳寺という真言宗のお寺だったようですが、明治維新の廃仏毀釈の際に寺が廃止され、現在の梅香崎神社になったようです。寺の格が高く、また絶景の地だったことから大徳寺という名称が残り「寺もないのに大徳寺」とうたわれる長崎七不思議のひとつとされるようになりました。
一の鳥居の前に立つと、長い階段が続いているのが見えますが、社殿までの道のりはさらに階段を上がります。由来が書かれた看板には「この地が崎陽の景勝地で且つ、唐人屋敷に隣しているで、他の人はもちろん旅の観客は必ずこの地に寄り、その絶勝に心魂を奪われて、帰ることを忘れる程であった」と書かれています。現在の眺めはビルに阻まれて残念ながらいまいち。ただし、この神社の名物として知られる「大徳寺焼き」を提供する趣豊かな茶屋、老舗きく水は健在。
香ばしい梅が枝餅にたっぷりの餡が入っていて、階段を上がった疲れを癒やしてくれます。
梅香崎神社の甘味で一服したら、お次の目的地、若宮稲荷神社(わかみやいなりじんじゃ)へと向かいます。路面電車の長崎電気軌道に乗るルートもありますが、今回はほぼ同様の所要時間のため、寺町通りを歩いて向かってみました。風情のある商店街があったり、立派なお寺がいくつもあったりと、おさんぽが楽しいルートです。
寺町通りを右折すると、長い坂道が待っています。息を切らせながら上っていくと、住宅街のなかをのんびり歩く猫たちに会うこともできました。さらに上ると稲荷社の朱色の鳥居と赤いのぼりが見えてきます。
こちらの神社は、坂本龍馬が参拝したともいわれる歴史スポット。
そもそもの神社の始まりは、若杉喜三太という人が自邸に祀っていた楠木正成の守護神(稲荷神)を延宝元年(1673年)に遷座したこと。
江戸時代後期に頼山陽が書いた『日本外史』は、“勤王のバイブル”“明治維新の原動力”ともいわれる書ですが、この本の影響で楠木正成の人気が高まり、若宮稲荷に勤王の志士が参拝したと伝えられています。
この神社のすぐそばには、龍馬たちが作った日本初の商社・亀山社中跡があるので、日課のように参拝していた可能性もあります。そんなことから当時「勤王稲荷」とも呼ばれていたそう。
若宮稲荷神社から諏訪神社へは、徒歩16分。若宮稲荷神社が、今回のさんぽの最高地点なのでどんどん下って路面電車が通る新大工町駅方面へと向かいましょう。路面電車が通る新長崎街道に出たら諏訪神社はすぐそこ。
長崎の氏神さまにふさわしい、幅の広い見事な石段の先に大きな大門、その先に壮麗な社殿が立っています。
諏訪神社の創建は、寛永2年(1625年)。当時、長崎ではキリスト教が広まり、市内の社寺は破壊されることが多かったため、市内にあった諏訪・森崎・住吉の三社を再興したのが始まりです。
“おすわさん”と呼ばれ親しまれている諏訪神社は、境内の散策スポットも豊富。「止め事成就の狛犬」心のトゲを抜いてくれるという「トゲ抜き狛犬」などの、ユニークな狛犬や、縁結びの願い事が叶うと伝えられている参道の敷石「男石」「女石」、ぼたもちやうどんが有名な月見茶屋などがあるので、たっぷり時間を取って参拝するのがおすすめです。
これにて、長崎の神社巡りは終了。足がパンパンになるほど、たくさん歩きましたが期待していた猫に会えたのは一匹のみ。それでも、坂の景色は情緒豊かな上、神社も歴史も絶景も堪能できる大満足のコースでした。
みなさんも、歩きやすい靴でぜひ長崎神社巡りを楽しんでみてください。