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特集 vol.295
日本の絶景を求めて
羽衣伝説ゆかりの
御穂神社と三保の松原
絶景の地、三保の松原に残された伝説とは? 伝説ゆかりのスポットと神社をめぐるおすすめルートや見どころご案内します。

三保の松原は天女が舞い降りたとされる、絶景の地


日本人なら誰でも一度は写真やテレビで見たことのある三保の松原。世の中には「がっかり名所」といわれるスポットもありますが、こちらは実際に行ってみると写真の何倍もすばらしい「行って間違いのない名所」と言えるでしょう。
海の向こうに富士山が見える景色でおなじみですが、海の手間には砂丘ともいえるほど広々とした砂浜、その手前には潮風になびくような美しい松林が広がり、写真では表現しきれない大スケールの景色を楽しめます。古来、多くの人に愛されてきた名所は、歌川広重の東海道五十三次にも登場。日本最初の名勝地のひとつであり、2013年には世界遺産にも登録されています。


海を入れて撮影した景色が有名ですが、砂浜越しの富士山も圧巻。

この場所をさらにロマンあふれる名所にしているのは、「羽衣伝説」ゆかりの地でもあること。三保の松原のすぐそばには伝説ゆかりの社として名高い御穂神社(みほじんじゃ)が鎮座。三保の松原の松林のなかには御穂神社の御神体であり、天女の羽衣がかかっていたとされる「羽衣の松」もあり、ゆかりの地を巡ることができます。


伝説ゆかりのスポット巡りは御穂神社からスタート


JR東海道線清水駅・新清水駅から三保の松原まではバスでアクセスが可能です。静鉄バス「三保の松原入口」バス停から三保の松原までは徒歩15分ほど。土日祝であれば、「世界遺産三保松原」バス停までのバスも運行されており、こちらからは徒歩5分でアクセスが可能です。車の場合は、東名高速清水ICから約25分。「三保の松原入口」バス停で降りた場合も車でアクセスする場合も、御穂神社の前を通るため、先に神社に参拝するのがおすすめです。

御穂神社の御祭神は三穂津彦命 (みほつひこのみこと、大己貴命・大国主命)、三穂津姫命(みほつひめのみこと)の二柱。三保大明神として、また羽衣伝説ゆかりの神社として千年の昔から崇敬を集めてきました。三保の松原ばかりが注目されがちですが、実はこちらの神社の境内や参道も世界遺産。参道は「神の道」といわれる500mの松並木で、道の先に鳥居・社殿が一直線に並んでいます。さらに、かつては御神体の「羽衣の松」も延長線上に位置していたとか。


世界遺産でもある参道「神の道」。立派な枝振りの松並木は、三保の松原へと続いています。

参道「神の道」を逆行していくと三保の松原はすぐそこ。参道から青々と茂った松林の中に入ると、柵に囲われた「羽衣の松」が見えてきます。実はいまの松は三代目。初代は江戸時代の宝永大噴火で海底に沈み、二代目は樹勢の衰えにより幹の一部を残して伐採され、2010年に推定樹齢200年の「新・羽衣の松」へと受け継がれたのです。
このクロマツは、御穂神社の御祭神が降臨する目印とされ、すぐとなりには御穂神社の離宮である羽車神社が建っています。
「羽衣の松」に降り立った二柱は、羽車神社を経て、「神の道」を通り御穂神社に鎮まるとされています。


「羽衣の松」の隣にある羽車神社は、願掛けのパワースポット。

三保の松原に伝わる羽衣伝説はハッピーエンド型


羽衣伝説に類似した話は、日本を始め世界中で語り継がれています。なかには、天女が衣を返してもらえず、衣の持ち主が天女のおかげでお金持ちになると家を追い出されたり、子どもを産ませられたりと、散々な目にあうパターンもありますが、三保に伝わる羽衣伝説はハッピーエンド型。
三保の漁師が松にかかった見たこともないような美しい衣を見つけ、持ち帰ろうとしたところ天女が現れ、衣を返してもらう代わりに舞を見せるというもの。ひとしきり舞ったあと、天女はそのまま天へ帰って行ったというエンディングは、この風光明媚なロケーションにふさわしいと感じさせてくれます。


松林の中にある「羽衣の松」。毎年10月にはこの松の前で「三保羽衣薪能」が開催されます。

松林を抜けると砂浜と富士山と駿河湾。白砂青松と富士山という散策の最後にふさわしい景色をゆっくりと楽しみながら、美しい伝説に想いを馳せてみてはいかがでしょうか?