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特集 vol.284
知っているようで知らない
神社トリビアE
自分の参拝作法は正しいか、気になったことはありませんか。今回は参道の歩き方や御朱印の受け方、手水がない場合の作法について、神社の方に質問してみました。

参道は右側通行?左側通行?


神社への参拝時、気になるのが作法やマナー。今回、質問に答えてくださったのは、兵庫県・神戸市にある都会のオアシス湊川神社(みなとがわじんじゃ)です。


智・仁・勇の三徳を備えた南北朝時代の名将・楠木正成公を祀る湊川神社。地元の人々には「楠公(なんこう)さん」の愛称で親しまれています。
写真提供:湊川神社

最初の質問は、鳥居から社殿へと続く参道の歩き方について。神さまの前に進むための道ですから、たどり着く前にすでに失礼があっては…と気になります。なにか気をつけたほうがよいことはあるのでしょうか。
「参道の真ん中は正中(せいちゅう)と呼ばれ、ここは神さまの通り道とされています。ですから道の真ん中は遠慮し、端を歩くのがよいですね。」

ここで疑問が。“歩きはじめてから参道の反対側に手水舎を見つけた”“トイレに行きたいけれど参道の反対側にある”など、参道の真ん中を横切りたいことがあるかもしれません。そんなときは、どうすればよいのでしょうか。たずねてみると、「参道を横切る際は、正中を越えるときに軽く頭を下げながら通れば大丈夫です」と教えてくださいました。ほかに、社殿のほうへ向き直って一礼することで神さまに敬意を表すという方法もあるようです。

ところで、右側通行と左側通行ではどちらが望ましいのでしょうか。
「”神さまに対して”ということであれば、左右どちらでも問題ありません。ただ交通整理が必要な場合など、神社で決めているケースもあります。湊川神社では、初詣シーズンのみ近隣の警察署と相談のうえ入口と出口を決め、一方通行にしています。通常は左右どちらを歩いていただいても大丈夫ですよ。」

なるほど、さまざまな疑問が解消されました。これで雑念なく参道を歩くことができそうです。


鳥居や神門の前では、一度止まって軽く一礼してからくぐります。参拝を終えて境内から出るときも、社殿の方へ向き直って一礼してからくぐると丁寧です。
写真提供:湊川神社

御朱印の由来といただき方


近年ブームの「御朱印集め」。特に近年は、アートのようにカラフルなものや特別な和紙を使った限定御朱印を用意しているところも増えて、見返すのがより楽しみに。御朱印人気はまだまだ続きそうです。

せっかく御朱印をいただくのなら、知識やマナーも身につけておきたいところですが、そもそも御朱印とはどんなものなのでしょうか。
由来は諸説あるようですが、もともとは書き写した経典を神社仏閣に奉納した際に授与された、受け取りの証明書のようなものだったのではといわれています。これがやがて、参詣のみの場合にも広く授与されるように変化していったというわけです。


湊川神社では複数の御朱印がありますが、こちらは本社の御朱印。社紋である「菊水紋」の印を押していただけます。
写真提供:湊川神社

御朱印をいただくタイミングも気になるところです。「参拝の証」としていただくのですから、やはりお参りを済ませてからお願いすべきなのでしょうか。湊川神社の方におたずねしてみました。
「御朱印は“この日に参拝しました”という証ですので、お参りの前でも後でも同じ日ですから問題はありません。御朱印は書くのに時間が必要ですから、こちらから御朱印帳をお預かりしている間のご参拝をおすすめすることもありますよ。」
ただし、御朱印を集めることだけが目的だと思われるようなマナー違反が全国的に問題になっていることから、神社によってはお参りを済ませてから御朱印を受けるというルールになっている場合もあるようです。

スマートに御朱印をいただくコツも伺ってみました。
「まず御朱印帳の書いてほしいところを開いて渡してください。貼付されていない紙類が挟まっていると遺失の可能性がありますので、御朱印帳を渡す前に確認していただくとよいと思います。御朱印帳は180度きれいに開ける状態でないと押印しづらいので、カバーをかけている場合は、片側だけでも外していただけると助かります。特にスナップボタンや装飾のあるカバーの場合は、完全に取り外していただいたほうがよいかと思います。心をこめて集中して書いていますので、話しかけずにお待ちいただけるとうれしいです。」
なお初穂料はあらかじめ小銭で用意しておくのがおすすめとのこと。準備万端整えておけば、混雑も避けられて一石二鳥ですね。


神社オリジナルの御朱印帳をお頒かちいただけることも。こちらは2種類ある湊川神社の御朱印帳のひとつです。
写真提供:湊川神社

手水が利用できないときは?


神社で神前に進む前には、境内の手水舎や手水鉢の水で手と口を清めるのが作法です。しかし手水舎や手水鉢がない神社や、あっても水が止まっていて利用できない場合にはどうすればよいのでしょうか。湊川神社の方に質問してみました。
「ご自宅を出る際に塩を体の左右左の順に振り、お清めをしてから出発されるという方法があります。また神門や鳥居をくぐる前に祓詞を唱えるのもお清めになります。祓詞はいくつかありますが、あまり長いものは覚えるのも唱えるのもたいへんなので、一番短い祓詞”祓え給え 清め給え(はらえたまえ きよめたまえ)“を唱えるとよいと思います。声に出さなくても、心のなかで唱えれば大丈夫です。」
昨今は感染症対策で手水が使えないことも少なくありません。この祓詞を覚えておくと安心ですね。

ところで、手水の利用停止とともに急増しているのが、手水鉢に花を浮かべる「花手水」です。フォトジェニックで、SNSなどで話題に。全国の社寺に広がっていますので、お近くの神社でも見られるかもしれません。ただし、同じ神社を訪れても、いつでも花手水が見られるとは限りません。急なイベント中止で余った花が奉納されているケースなどもあり、いつ見られるとは決まっていない神社も多いようです。水に浮かぶカラフルな花々が心を明るくしてくれる花手水。参拝時に出会えたらラッキーですね。
そんな偶然を待ちきれない!という人におすすめなのが、埼玉県行田市で期間限定で開催される「花手水week」です。きっかけとなったのは行田八幡神社(ぎょうだはちまんじんじゃ)の花手水。2020年4月に「自粛生活が続き苦しい時期だからこそ、訪れる方々に癒しを提供したい」とスタートし、その思いに賛同した社寺や商店、住民たちによって、町ぐるみのおもてなしへと発展しました。月に1回ライトアップも行われるので、興味のある方は公式サイトを確認してみてはいかがでしょうか。


カラフルでセンス抜群の行田八幡神社の花手水。花には手を触れず、目で愛でるのがマナーです。
写真提供:行田おもてなし観光局