1. 【愛知・豊橋市/安久美神戸神明社】
春の訪れを告げる、粉まみれ必至の奇祭
2. 【広島・福山市/吉備津神社】
焚き火を囲んで「ほら」を吹く備後一宮節分祭
3. 【京都・京都市左京区/須賀神社】
節分限定!美人になれる!?ラブレター売りが登場
4. まだある!ユニークな節分祭
新幹線が停車する愛知県豊橋市には、参加すると白い粉まみれになる奇祭があります。五穀豊穣と無病息災を願う、安久美神戸神明社(あくみかんべしんめいしゃ)の豊橋鬼祭(とよはしおにまつり)です。最大の見せ場は、ユニークな田楽「赤鬼と天狗のからかい」。いたずらをする荒ぶる神の赤鬼と、懲らしめようとする武神天狗とが、秘術をつくして闘うというストーリーです。
闘いに敗れた赤鬼はつぐないとしてタンキリ飴と白い粉(小麦粉)をまき散らしながら退散し、境内を出て町中をめぐります。この粉をかぶり、タンキリ飴を食べると厄除になり、夏病みしないといわれているそう。素朴な風味でやさしい甘さのタンキリ飴は、お年寄りから子どもまで人気です。
とても風変わりなこのお祭りは、なんと平安時代から約1000年も続いているもので、国重要無形民俗文化財にも指定されています。
開催日は毎年2月10日、11日。11日に行われる「赤鬼と天狗のからかい」は例年多くの人で賑わいます。ただし2021年は感染症対策のため、祭礼奉仕者のみで執り行い、映像を配信する予定だそうです。厄除タンキリ飴の飴まきも中止となりますが、1月1日から社務所で授与していただけます。
大ぼら話で盛り上がる節分祭もあります。開催しているのは吉備津神社(きびつじんじゃ)。備後国(現在の広島県東部)の一宮で、備後国が吉備国から独立する際、備中国一宮の吉備津神社からわかれたのが始まりと伝えられている神社です。
毎年2月3日、日がとっぷりとくれた頃に行われる風変わりな神事が、ほら吹き神事。年男、年女による豆まきのあとで、大きな焚き火を囲んで放談会がはじまります。参拝者は本殿で五穀豊穣を祈ったあとで身を清める御神酒をいただけるため、お酒も入ってのほら話は大盛り上がり。ヤジも飛び交い、参拝者たちは大爆笑。ほら話のテーマはなんでもあり!というユーモアあふれる奇祭です。
ほら吹き神事の発祥はよくわかっていません。もともとは神社の祭事ではなく、民衆の娯楽だったのではないかと考えられているそうです。節分祭に参拝に訪れた人々を、近くの住民が焚き火で迎え、退屈しのぎや眠気覚ましに雑談をしていたのがはじまりだともいわれています。
現在は、ほら吹き保存会のメンバーが巧みな話術でほら話を披露し、会場を盛り上げています。ときには参拝者が飛び入り参加することもあるそうです。おおいに笑えば、邪気を払って福を呼び込めそうですね。
厄除招福を願う、節分祭。なかでも恋愛成就を願う人々にイチオシなのが、京都大学の近くにある須賀神社(すがじんじゃ)です。
毎年節分祭の2日間(2021年は2月1日と2日)のみ、覆面をして公家装束をまとい、文(ふみ)を結んだ梅の小枝を肩に担いだ、懸想文(けそうぶみ)売りが現れます。
この懸想文が、良縁を招くスペシャルアイテム。「鏡台やタンスの引き出しなどに忍ばせておけば、容姿端麗になり、衣装が増え、良縁に恵まれる」といわれているそうです。
懸想文とは、いわゆるラブレターのこと。むかしは恋心を相手に伝える主な手段は手紙でした。生活に窮した公家たちが、教養をいかしてその手紙を代筆し、金銭を得ていたのが、懸想文売りのはじまりなのだそうです。貧しくとも家柄があるため、懸想文を売る際には、顔を見られないように白い布で隠していたと伝えられています。
平安時代からはじまったとされ、江戸時代には京都の新年の風物詩といわれるほど流行した懸想文売りですが、明治時代になると一度は姿を消してしまいました。
それを復活させたのが、縁結びのご利益で知られる須賀神社です。御祭神は、須佐之男神(すさのおのかみ)と櫛稲田比賣命(くしいなだひめのみこと)の夫婦神。懸想文のパワーがスゴイと噂になるのもうなずけます。