世界遺産・富士山には構成資産の神社が8社あります。その代表格が富士山本宮浅間大社(ふじさんほんんぐうせんげんたいしゃ)。富士山を信仰する浅間神社は全国に約1300社もあり、その総本社です。祀られているのは浅間大神(あさまのおおかみ)とも呼ばれる、木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)。第11代垂仁天皇が富士山の大噴火で荒れ果てたことを憂い、浅間大神(木花之佐久夜毘売命)を祀って山の霊を鎮めたのが、この神社の起源です。
木花之佐久夜毘売命には、夫に貞節を疑われた際、戸のない産屋を建てて火を放ち、燃え盛る炎の中で無事に皇子を出産して身の潔白を証明したという伝説があります。火難消除のほか、家庭円満、安産、子授けのご利益、良縁、家内安全など、女性にうれしいご利益もたくさん授けてくださる女神です。
主祭神・木花之佐久夜毘売命は、日本神話に登場する女神たちの中でもひときわ美しく、花も恥じらう美貌の持ち主だったと伝えられています。その御神名から御神木は桜とされ、春になると境内のおよそ500本ものソメイヨシノが咲き誇ります。楼門をくぐると正面拝殿の右側にあるしだれ桜(2代目信玄桜)も必見。武田信玄が寄進したと伝わる特別な桜です。朱塗りの社殿と桜の和のコラボレーションは趣たっぷり!
古くから富士山登山者が登山前に禊をする慣しがあった、湧玉池(わくたまいけ)。池の水は、富士山の雪解け水が、何層もの溶岩の間を長い時間かけて通り抜け、ろ過された湧水です。水量豊富な湧水は一年中ほとんど増減がなく、お水取りもできます。ただし飲む場合は煮沸してから。池の水は底が見えるほど澄んでいます。眺めているだけで心が洗われると評判です。
霊峰富士を眺めながら参拝できるのは、富士山麓にある神社の特権。美しい富士山が社殿や鳥居とワンフレームにおさまる絶景は、外国人にも人気です。
参道からも鳥居越しの富士山などを楽しめますが、緑豊かな境内にもおすすめのビュースポットがたくさんあります。
西鳥居から本殿の方向を見ると、木の間から富士山が。東鳥居近くの馬場東付近から湧玉池越しに見ると、富士山が鳥居の中におさまる場所もあるのでぜひ探してみては。
御手洗橋付近や神田川沿いのふれあい広場からも美しい富士山の姿が楽しめます。春には桜が華やかな彩りを添え、ますます日本情緒あふれる景観に。鏡池からは右側社務所の後方にちらりとのぞく富士山の姿を楽しめます。天気が良ければ、鏡池に映る逆さ富士も見られるかも!
日本のシンボル、富士山。国有地と思われがちですが、実は8合目から上は私有地です。かつては徳川家康の所有地でしたが、浅間大社に寄進し、境内地になったと伝えられています。
古くから富士山に宿る神さまは、火口の底にいると信じられてきました。その火口の底が8合目あたりにあるとされるため、そこから上を境内地としているのだとか。
山頂には奥宮である富士山頂浅間大社奥宮(ふじさんちょうせんげんたいしゃおくのみや)と、末社である富士山頂上久須志神社があります。
参拝できるのは開山期の7・8月のみ。おまけに日本一高い山の頂上まで登らねばなりません。ハードルは高いものの、「生涯で一度は登ってみたい」と人気の富士山ですから、多くの人が訪れます。どちらの神社にも限定のお守りや御朱印、御朱印帳などがあるので、お見逃しなく!
富士山信仰では、ご神徳を配しながら登山する登拝が行われます。平安末期から始まり、江戸時代には団体で登拝する「富士講」も登場。登拝では、心身を許らかにするため「六根清浄」と唱えながら、金剛杖をついて登ります。富士山頂上浅間大社奥宮と、富士山頂上久須志神社を参拝したのち、山頂の火口を一周する「お鉢廻り(おはちまわり)」をするのが慣しです。せっかくなので、登頂の際はぜひお鉢廻りにもトライしてみては? 7・8月は、天気さえよければ火口壁稜線のどこからでもご来光を眺められます。ご来光とともに影富士も期待するなら、雷岩(いかづちいわ)付近が狙い目です。