七五三は7歳、5歳、3歳という年齢の節目に、成長や健康を神さまにお願いをする日本の伝統行事です。昔は「子どもは7歳までは神さまのようなもので、人の子ではない」といわれていました。7歳までの子どもは、病気や事故でいつ死んでしまうかもわからない存在で、魂が不安定とされていたからです。そこで、7歳まで育ったことへの報告と感謝、以後の無事と健康を願って神さまに祈りを捧げたのです。
時をへて、現代の七五三事情は家族の行事としてすっかり定着しています。安産の神さまとして知られる東京八王子の子安神社(こやすじんじゃ)、神職・八馬さんに、まずは最近の七五三事情について伺ってみました。
「最近はやはり少子化の影響で、七五三がご家族、または一族にとって大イベントになっていますね。おじいちゃん、おばあちゃん、ご両親をはじめ親戚の方々もいっしょに来られるケースもあり大所帯。日程は11月15日に限らず分散型になっていますが、お父さんが幹事となって多くの人たちの日程調整を行い、お食事場所の設定などもされているようです」。
あらためて七五三の参拝マナーを八馬さんに伺ってみると「七五三だけのマナーは特にないと思います。通常の参拝と同じで、鳥居をくぐる前に一礼するところから始まり、手水舎で手や口を清める、神前では二礼二拍手一礼など基本的な礼儀は変わりません。
お子さまにとっては、お宮参りのときから成長されて、次に経験する人生儀礼が七五三です。認識ができる年齢になっていますから『神さまのところにご挨拶に行く』ときの作法を、親御さんが教えてあげていただきたいと思います」。
子安神社での御祈祷は約15分。拝殿に昇殿しお祓いを受け、神主が祝詞をあげ巫女による舞と雅楽の奉納があります。八馬さんは「御祈祷の際のマナーとしては、拝殿に出入りするとき、軽く神さまのほうを向いて一礼をする。また、御祈祷中に写真やビデオ撮影するのは神さまに失礼ですから控えてください。神前にふさわしい服装も含め、神道は礼に始まり礼に終わるのが基本です。マナーと言えばそれくらいでしょうか?拝殿で御祈祷を受ける正式参拝ではなくても、略式参拝でもご利益は変わるものではありません。お子さまの成長について、しっかりと神さまにご報告し感謝していただきたいと思います。
ご祈祷中にお子さまが泣いたりぐずったりしてしまうこともありますが、それは一向にかまいません。泣く子は育ちますから大いに泣かせてあげてください」。
子どもの守り神をお祀りしている子安神社では、毎年9月、行司が大声で赤ちゃんを泣かせる「泣き相撲」を行っており毎回大盛況。泣く子ども大歓迎の神社でもあるのです。
御祈祷の際の初穂料は気になるところ。「七五三の場合は、各神社さんが決めたものがあり、わかりやすくなっているのではないでしょうか?当社では6000円から上は3万円まで8段階に分かれています。御祈祷の内容に差があるわけではなく、お札の大きさが違い、おもちゃが付くだけです。受付の際に、窓口でお納めいただいております。同時に受付の用紙に住所やお名前を記入していただくのですが、そのときはお子さまの親御さんが書いていただくのがスムーズですね。おじいちゃんが張り切って初穂料をお納めになることがよくありますが、お孫さんの住所などがわからないまま受付されると窓口が混乱する原因にもなってしまいます」と、八馬さん。
最後に「お母さんやお子さまがきちんと着物を着て、のし袋に入れた初穂料を用意するなどみなさん日本の習慣をよく守っていらっしゃると思いますね。七五三という古くからの伝統行事が脈々と継承されていることに、神さまも喜ばれていると思います」。