天狗の神社の情報をネットで目にしたのは、数年前のこと。ひと目見て「いつか行ってみたい」と思っていた神社へ、ついにでかけてきました。
実際に訪れてみると、「こんな神社があったなんて!」と驚くことばかり。めくるめく天狗の社の様子をご紹介します。
天狗の社こと古峯神社(ふるみねじんじゃ)があるのは、栃木県鹿沼市の古峰ヶ原(こぶがはら)。日光開山を成し遂げた勝道上人が修行したことから、日光全山の僧坊たちが明治維新まで修行してきた場所です。現在の古峰ヶ原は、ハイキングコースが整備され、ハイカーに人気のエリアとなっています。
御祭神は日本武尊(やまとたけるのみこと)。社伝によると、約1300年前に隼人という人物が日本武尊の御神徳を慕い京都より遷座したのが始まりとのこと。天狗の社としても知られており、境内には天狗の面や像があり、天狗が描かれる御朱印が人気を博しています。
アクセスは東北自動車道鹿沼ICから約34km。高速道路を降りてしばらく走ると、神社から20kmほど手前に「古峯神社参道」の標が。これほど手前から参道とされていることに驚きましたが、神社の手前6kmのところには圧巻の大鳥居があり、さらに驚くことになりました。この「一の大鳥居」は、高さ約25m、ビル8階建て相当の大きさで竣工当時は日本一の大きさだったそう。緑深い山道を進むと突然ひらけた集落の先に突如現れた巨大建造物に「これはすごい神社なのでは」と、思わずテンションが上がりました。
神社に近づくと、みやげ店が数件並び、にわかに賑やかな雰囲気に。手前と奥の2カ所の駐車場があったため、どこに停めるべきか迷っていると、みやげ店のご主人がでてきて「この手前の駐車場に停められるよ」と声を掛けてくれました。車を降りてお礼を言うと「これからどんどん混んでくるから、手前の駐車場に停められてよかったね」と言います。
訪れたのは火曜日の午前中。ふと周りを見ると、続々と参拝者が神社の中へと歩いていきます。平日にもかかわらず多くの参拝者がいるのに、またもやびっくり。
とまどいつつも境内へ向かうと、鳥居と「古峯神社」と記した石塔があり、裏にまわると、「吉田茂謹書」とありました。この場所で、戦後初の内閣総理大臣を務めた吉田茂の文字と出会えるとは、なんだか不思議な気分です。
鳥居をくぐると参拝者のグループである「講」が奉納した石碑もズラリと並んでいます。古峯神社の公式サイトによると、全国に約2万もの講中があり、崇敬者は200万を超えるとのこと。全国から篤い崇敬を集める神社のようです。
境内へ歩を進めると、正面に古峯園(こほうえん)と名付けられた庭園があり、庭園の手前右手の石段をあがると社殿があります。茅葺きの趣のある社殿の前で参拝を終えると、なんだか違和感があります。その違和感とは、「参拝者はたくさんいるのに、社殿の前で参拝している人が異様に少ない」ということ。
よく見ると、お賽銭箱が置かれた脇に玄関があり、参拝客がどんどん吸い込まれていきます。どうやらなかに入れるようです。
靴を抜いて社殿に入ってみると、長い廊下がのびていて、とてつもない広さ。左に進んでみると大広間にお賽銭箱や御簾があり、その前で多くの人が着座して参拝していました。たくさんの神社を参拝してきましたが、自由に昇殿して参拝できる神社は初めてです。
広間の左手に目をやると、天狗が描かれたさまざまな御朱印の見本が張り出されていました。古峯神社は、御朱印の種類が多いことでも知られています。今回張り出されていた御朱印は33種類。2017年の情報では27種類となっていたので、どんどん増えているようです。
印刷と直筆の2種類があり、直筆の場合は2時間待ち、3時間待ちは当たり前。絵柄により書く担当者が異なっているため、当日いただける御朱印の種類も限られています。
直筆の御朱印の受付に行き、試しに待ち時間を聞いてみると今なら2時間待ちとのこと。この程度の待ち時間なら外の庭園を見たり、食事を取れば待てないこともありませんが、今回は好きな絵柄を選べる印刷をチョイス。希望の番号を御神前前の小札授与所で伝えると、日付のみ直筆の御朱印をすぐにいただくことができました。
御朱印をいただいたあとに社殿内を見てまわると、天狗の像や面、下駄などが掲げられています。一番見応えがあるのが、「天狗の間」にある顔の長さが約1.6mある面。欅を一刀彫りでくりぬいて作成したもので、江戸期の作と伝えられています。
これら天狗関連の物は、心願成就のあかつきに奉納されたもの。天狗は御神祭の神使であり、災難が起こったときにただちに飛翔して災難を取り除く力があると信じられているそう。その数や立派さから、たくさんの窮地を救い、願いを叶えてきたことが見てとれます。
廊下の先には、大きな茶釜もあり「古峯神社不滅の御神火」の文字が。創始以来絶やしたことのない御神火であり、沸き立つ霊気(湯気)に当たれば無病息災で過ごすことができるそうです。かすかな湯気に当たり、奉納物をさらに見学して参拝を終えました。
庭園散策を楽しんだり直会(昼食)をいただいたりすることもできるので、次回は直筆の御朱印を待ちつつ、もっとじっくり天狗の社を参拝してみたいものです。