世界遺産にも登録されている下鴨神社(しもがもじんじゃ※賀茂御祖神社・かもみおやじんじゃ)。
境内は、太古の自然を残す糺の森に守られ、町中であることを忘れさせてくれる静謐な空気が流れています。
下鴨神社では、平安時代から伝わる伝統的な流し雛がおこなわれています。それは、桟俵(さんだわら)にのせたお雛さまを、境内の御手洗川に流すというもの。お雛さまは、土をこねて顔を作り、紙の衣装を着せた素朴なものが使われます。はじめに流し雛をおこなうのは、十二単と束帯姿を着付けた一般公募によるカップルや来賓。その後、一般の参列者のお雛さまが次々と清らかな流れにのせられていきます。
当日の進行は、10時20分から桟俵の授与、10時30分から十二単の着付け、11時から十二単と束帯姿のカップルや来賓による流し雛、12時から一般の参列者の流し雛となっています。
見応えがあるのが十二単の着付け。解説を聞きながら一枚一枚と着物を重ねていく様子を見学できるので、毎年好評の行事となっています。また、家庭ではなかなか見られなくなった7段飾りの京雛人形も展示され、その前で記念撮影をすることも。
梅の開花とも重なり、ひと足早い春の雰囲気を感じることができるでしょう。
嵐が登場したJALのCMのロケ地としても知られる、福岡県福岡市の宮地嶽神社(みやじだけじんじゃ)。
CMでは、参道の先の水平線に日が落ちる「光の道」が印象的でした。創建約1700年という歴史ある古社で、神功皇后である息長足比売命(おきながたらしひめのみこと)と三韓遠征に随従した勝村・勝頼大神の三柱をお祀りしています。
全国から篤く崇敬を集める宮地嶽神社の桃の節句でおこなわれているのは、「流し雛神事」。
当日は11時すぎから神事がスタートします。和紙の雛人形を、桃で飾られた小舟にのせ、お祓いののちに流し雛がおこなわれます。雛人形のなかには、参拝者の願い事を記した祈祷棒が。桃の小舟は、たくさんの願いをのせて水面を流れていきます。
境内では、桃の枝に和紙の雛人形がそえられた「お花雛」が飾られたり、雛あられの授与もあるので、桃の節句らしい趣が楽しめるはず。
本殿前にある寒緋桜、通称「夫婦桜」も、ちょうど開花シーズンをむかえるので、時期があえば早春のお花見が楽しめるかもしれません。
「あわせてください淡島さまよ、お礼参りは二人づれ」。
これは、三浦半島の小さな丘の上に立つ淡島神社(あわしまじんじゃ)への信仰を伝える歌。
「あの人に会わせてください淡島神社の神さまよ、結ばれた後は二人でお礼参りにまいります」といような意味でしょうか。縁結び、女性の病気平癒、子宝安産に御利益があるとされる女性の守り神で、江戸時代には三浦半島一帯から崇敬を集めていたと伝えられています。
淡島神社の例大祭は、女性の守り神にふさわしく桃の節句の3月3日。「横須賀風物百選」にも認定されている底抜け柄杓の柄に麻紐を結んで奉納する祭礼や流し雛神事などがおこなわれています。
底抜け柄杓の奉納は、古の民間信仰をいまに伝える貴重なもの。「帯下の病を流し清める」「水が抜けるように安産に」という願いをこめて、昔から奉納されてきました。
当日は、朝から底抜け柄杓の頒布が参道の石段の手前でスタートし、80軒ほどの屋台も並んで賑やかな雰囲気に。15時半ごろには流し雛神事も始まります。雛人形と願い事などが書かれた流し雛守りをのせた小舟が神社のすぐ前の海へ流されるさまを、海岸から見ることができます。
こちらの流し雛は、災いを海に流すためと人形供養というふたつの目的でおこなわれているもの。全国にある淡島神社の総本社、和歌山県和歌山市の淡嶋神社の人形供養が知られることから、横須賀市の淡島神社にも人形が持ち込まれるようになり、30年前から例大祭に流し雛神事がおこなわれるようになったそうです。
桃の節句とはいえ、まだまだ陽射しが恋しい季節。海風にあたってもゆっくり参拝できるよう、暖かくしておでかけください。