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特集 vol.201
古代ニッポンのロマンを探求
神話の神社を歩く
~オオクニヌシの試練編
古事記・日本書紀の物語とゆかりの地を紹介する「神話の神社を歩く」第5回。前回に引き続き出雲大社の御祭神でもあるオオクニヌシの波瀾万丈な神話をお届けします。

天地をまたいで、生死をかけた大冒険へ


因幡の白兎を助けたオオクニヌシ。白兎の予言通りヤカミヒメと結婚してめでたしめでたしとはならないのが日本神話です。
意地悪なお兄さんたち(八十神)が我先にとヤカミヒメのところへ行くと、ヤカミヒメは「私はオオクニヌシノカミと結婚します」と宣言。嫉妬で怒り狂った八十神は、なんと弟オオクニヌシの暗殺を計画します。
その計画とは、伯耆国(鳥取県西部)にある手間山の麓に連れて行き、赤いイノシシに見せかけた真っ赤に焼いた岩をオオクニヌシに捕まえさせるというもの。必死に岩を抱き留めたオオクニヌシは、黒焦げになって死んでしまいます。
オオクニヌシの母神は大変嘆き悲しみ、カミムスヒノカミに頼んでオオクニヌシを生き返らせます。
元気に歩き回るオオクニヌシを見た八十神は、今度は木に挟んで殺してしまいますが、またも母神に助けられます。あまりに度重なる危機に母神の勧めもあり、祖父スサノヲのいる根の国(黄泉国)へ行くことにしました。


焼けた岩を抱えて命を落としたオオクニヌシの蘇生に協力したのが、赤貝であるキサガヒヒメ(𧏛貝比売)と、蛤であるウムギヒメ(蛤貝比売)。古事記では、キサガヒヒメが集めた貝の粉を、ウムギヒメがこの清水井で練って身体に塗りつけたと記されています。

白兎の予言はハズレ!? オオクニヌシがまさかのひと目ぼれ


根の国へ行ったオオクニヌシは、スサノヲの娘スセリビメとひと目で恋に落ち深い仲に。ヤカミヒメとくっつくかと思いきや、新恋人の登場とは、アメリカのドラマばりに怒濤の展開ですね。
そもそも根の国へはスサノヲに助けを求めて行ったわけですが、高天原で暴れたこともあるスサノヲ。祖父らしくオオクニヌシを助け二人を祝福する・・・なんてことはありません。娘を取られたことでオオクニヌシを憎み、罠にはめて殺そうとします。
蛇やムカデのいる室に入れたり、野火で焼き殺そうとしたり・・・。その度にスセリビメの力添えや自身の知恵で試練を乗り越え、ついに逃亡の機会が巡ってきます。オオクニヌシは、スサノヲの持ち物の生太刀(いくたち)・生弓矢(いくゆみや)、神意を聞くための天の詔琴(あめののりこごと)、そしてスセリビメを奪って根の国から逃げ出しました。あとを追ったスサノヲは黄泉比良坂(よもつひらさか)まで行ったところであきらめ、「生太刀と生弓矢で兄弟たちを追い払い、スセリビメを正妻とし出雲国を治め、高天原に届くほど高い宮殿をかまえて暮らすがよい」と大声で呼びかけたと記されています。
スサノヲの言うとおり、無事に兄弟を追い払ったオオクニヌシは、いよいよ出雲国の統治を開始します。
ちなみに、ヤカミヒメとは寝所に入り子を成したものの、スセリビメの嫉妬を恐れたヤカミヒメは子どもを置いて稲羽(因幡=島根県東部)に帰ってしまいました。


島根県八束郡東出雲町にある黄泉比良坂(よもつひらさか)伝説の地。黄泉比良坂は、根の国と現世の境界とされています。


赤猪岩神社本殿。根元がみずみずしく苔むした巨木の中に建っています。

オオクニヌシが抱えて落命したと伝わる大岩が、地中深くにあるそう。大きな石で蓋がされ、周りには柵と注連縄があり厳重に封印されています。

神話の舞台は
島根県南部町


因幡から高天原、出雲へと舞台を次々と変えて描かれているオオクニヌシの再生神話。その再生の地として知られるのが、島根県南部町です。
オオクニヌシが受け止めて落命した岩が封印されているのが赤猪岩神社(あかいいわじんじゃ)。大国主命を主祭神に、母神の刺国若比売命(さしくにわかひめ)、素戔嗚尊、さらに、稲田姫命(いなだひめのみこと)を合祀しています。オオクニヌシ再生にちなみ「再起」「再生」の御利益を求めて参拝する人が多いそう。
また、再生にあたった蛤貝比賣神(うむぎひめのかみ)、蚶貝比賣神(きさがいひめのかみ)や素戔嗚命(すさのおのみこと)という再生神話ゆかりの神々を祀っているのが清水川神社(しみずがわじんじゃ)です。上の写真にある清水井のすぐそばで、赤猪岩神社からかつての出雲街道だった古道を通れば30分ほど。蛤貝比賣神、蚶貝比賣神の二柱をともに祀るのは、清水井神社と出雲大社(いづもおおやしろ)の2社のみです。
また赤猪岩神社から車で約15分の位置にある母塚山(はつかさん)は、イザナミの御陵という説もある山。山頂からは素晴らしい景観がのぞめるので神話ゆかりの地として、あわせて訪ねてみるのもよいでしょう、



【次のお話、「オオクニヌシの国作り編」はこちら】