小江戸とは、「江戸のように栄えた町」といった意味合いの言葉ですが、千葉県香取市にある佐原も、そんな小江戸のひとつ。
「お江戸みたけりゃ佐原へござれ、佐原本町江戸まさり」と、当時の賑わいぶりが唄われています。町を繁栄に導いたのは、利根川水運を利用し富を築いた商人たち。江戸との盛んな行き来のなかで、江戸の文化を取り入れつつ独自の形に昇華させていったと伝えられています。
千葉県で唯一、無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」に登録された佐原の大祭は、「江戸勝り」文化の集大成。
山車に乗る身の丈4~5mの大人形や、総欅作りの山車を飾る繊細な彫刻は、江戸末期から大正にかけて名人と呼ばれた人形師・彫刻師たちが手がけたもの。
人形のモチーフは、菅原道真や太田道灌、すぐそばの香取神宮(かとりじんぐう)にも祀られる経津主命(ふつぬしのみこと)など、神話や歴史上の人物。まるで生きているかのような存在感を放っており、一見の価値があります。
開催は夏と秋の年に2回。
夏祭りは八坂神社(やさかじんじゃ)の祭礼として10台の山車が、秋祭りは諏訪神社(すわじんじゃ)の祭礼として14台の山車が曳き回されます。
佐原囃子の調べにのって、古い家々の軒先をかすめるように山車が巡行する様子は風情たっぷり。祭礼期間中は、河川敷に臨時駐車場が設けられますが、駐車場と会場の行き来はさっぱ舟と呼ばれるシャトル船。舟から見る祭りは、さらに風情があっておすすめです。
およそ300年の歴史を誇る八戸三社大祭は、八戸地方最大の祭。
名前のとおり、おがみ神社・長者山新羅神社(ちょうじゃさんしんらじんじゃ)・神明宮(しんめいぐう)の三社による祭りです。享保6年(1721年)、豊作を願って法霊社(現おがみ神社)が神輿行列を仕立て、長者山虚空蔵堂(現長者山新羅神社)まで練り歩いたのが祭りのはじまり。
山車祭りは各町が山車の意匠を競いあい豪華絢爛になる傾向がありますが、八戸三社大祭がすごいのは三つの神社の27台もの山車が競いあうスケールの大きさ。
高さ10m・幅8mにもなる山車は、民話や歌舞伎など毎年題材を変えて作り替えられるので、ふたつとして同じものはありません。色合いの華やかさに加え、隅々まで精緻な細工が施されていたり、からくりや蒸気が噴き出す仕掛けがあったりと、一年で解体するのがもったいないほどの素晴らしさです。
ひときわ華やかさが増す、夜の山車が見られるのは7月31日の前夜祭と8月4日の後夜祭。目がくらむほどきらびやな山車が一斉に展示される様子は、日本夜景遺産にも登録されています。
祭りらしい賑わいが楽しめるのは、8月1日のお通りと3日のお還り。巫女行列や武者行列、獅子舞ならぬ虎舞や太神楽、駒踊など、神社行列や伝統芸能が山車行列に加わり祭りを盛り上げます。大きな山車には、沿道からはどっと歓声があがることも。観客も町の人々も一体になって楽しめる雰囲気も魅力となっています。
唐津の街が、1年で最も盛り上がる「唐津くんち」は、唐津神社(からつじんじゃ)の秋季例大祭。
無形文化遺産に登録された山車は立派なものばかりですが、こちらは総漆塗り。町ごとに14台あり、高さ約7m、重さ約2~3t。金・赤・青など極彩色に輝く巨大な工芸品です。
江戸末期に刀町が一番曳山の「赤獅子」を初めて奉納すると、ほかの町も負けずと豪華な曳山を造りあげました。制作費をいまのお金で換算すると、なんと1台1億円!
ひとつの町で、そんな大金をだしあうとは、唐津っ子の祭りにかける本気が見てとれます。
開催は毎年11月2日~4日。最大の見せ場があるのは、3日の御旅所神幸です。一番曳山・刀町の「赤獅子」から十四番曳山・江川町の「七宝丸」まで、制作年代順に並んで唐津神社を出発。旧城下町を巡行します。終着地の御旅所で、砂地にめり込む山車を曳き子たちが力をあわせてじりじりと曳き込むシーンが祭りのクライマックス。すべての山車が御旅所に並ぶと、熱気は最高潮に達します。
通好みなのが3日の町廻り。最後の巡行に、曳き子が名残を惜しみながら「エンヤ!ヨイサ!」と声をかける様子が感動的。
豪華な曳山とともに、唐津っ子の心意気を感じてみてください。