来る年の福を願って参拝し、縁起物の熊手を買って帰るのが酉の市。
東京をはじめ、関東地方各地で開催されていますが、数ある酉の市のなかで人出も知名度もナンバー1なのが、鷲神社(おおとりじんじゃ)でおこなわれる浅草酉の市です。
神社.com編集部では、毎年欠かさず参拝してその賑わいを楽しんでいます。
通ううちにわいてきたのが「始まり方や終わり方はどんな感じ?」「結構盛り上がったりするのかな?」なんていうソボクな疑問です。
では、実際に取材してみよう、ということで2015年の酉の市で一の酉の開始シーンと、三の酉の終了シーンに密着してみました。
浅草酉の市が始まるのは深夜0時。24時間おこなわれているので、終了も同じく深夜0時です。
一の酉の始まりを調査するというミッションでは、昼のようすも確認しておこうと昼12時、17時、23時過ぎから開始後までを見てみることにしました。
12時に鷲神社へ到着してみると、目の前の国際通りにはトラックがずらり。境内に入ってみると、熊手商の方たちの準備の真っ最中です。夕方に再度訪れてみてもさすがに駅もガラガラ、のんびりとした雰囲気でした。
そろそろ人も集まってくるだろうと、23時すぎに再度出直してみると驚くべきシーンを目撃することになります。それは、開始30分前から次々と参拝して帰っていく人が現れはじめたこと。「まもなく始まるのに、一体ナゼ!」と心のなかで突っ込みを入れていると、さらに「よー!」という声とともに三本締めが聞こえてきました。縁起熊手もフライング・・・。
0時ちょうどにすべてが始まるものだと思っていたのは間違いだったようです。
開始の時間までいると終電に間に合わないせいか、何でも一番がよいという江戸っ子気質によるものなのか? 理由はわかりませんが、0時前でもお客さんがいれば縁起熊手を販売するようです。
そして10分前。参道にはあっという間にたくさんの人が並んで、初詣のような賑わいです。神職の方が拝殿の前に立ち参拝者に向かって榊を振ってお祓いをしてくれると、次にマイクを持った方が現れました。「どんなお話をしていただけるのだろう」と期待していると「これから酉の市が始まるけれど危ないからお賽銭は決して投げ入れないこと」という注意だけでした。
ついに時間になって、ドーン!という一番太鼓の音が響くと、思わず「えっ!?」というできごとが。
まわりに並んでいた人たちが、一斉にお賽銭を投げたではありませんか。さっき注意されたばかりなのに・・・。隣のおじさんを見ると、あきらかに「エヘヘ」という顔をしています。その雰囲気からすると、どうやら毎年のお決まりになっているようです。
その後、参拝する人の列が道の方まで伸び、縁起熊手の出店も外の屋台も人が増えていきましたが、例年の混雑時間帯の人たちに比べると、先を急ごうという雰囲気がなく心なしかのんびりしているように見えます。
深夜なのにたくさんの人がいて、でもなんだかゆる〜い感じ。これが、地元の人だけが集まる昔ながらの酉の市の姿なのかもしれません。
酉の市はどうやって終わるのかを確認すべく、三の酉の鷲神社をおとずれたのは23時過ぎ。
23時30分を過ぎると、どんどん人の波が引いていきます。さ、さびしい。
「もう最後だから安くしますよー!」と縁起熊手のディスカウント合戦もスタートし、思わず足をとめると「8000円だけど5000円、いや最後だから3000円にしちゃおう」と、さすがのラストプライスです。ご祝儀の意味を込めて5000円払いましたが、夕方ではなかなかない割引額で、よい買い物をすることができました。
人がどんどん少なくなる一方で、三本締めは聞こえてきます。どうやら、どんな熊手を買っても最後は三本締めをしてくれる店が多いもよう。三本締めを体験してみたい人は終了間際に行くとよいかもしれません。
そして、いよいよ0時。
ふと気づくと入り口で玉串を振っている神職の方が、拝殿に向けて一礼。
といっても熊手屋さんは電気がついたままですし、飲食の屋台や露店街は、0時以降も営業し、だいたい1時か2時くらいに店を閉めることが多いそう。
実にあっさりとした終わり方でした。
ちなみに、ひとつ確認できたのは江戸っ子ならぬ浅草っ子は「一番が好き」ということ。
熊手屋さんが
「みんな一番が好きだから、一の酉の一番で持ち帰りたい人もいるしね。一番で持ち帰ることができなければ、三の酉まで飾らせておいて最後に取りに来るという人もいるしね」とおっしゃっていました。
確かに一番札なるものもありますし、開始時にお賽銭を投げるのは一番にお賽銭を賽銭箱に入れたいということなのでしょう。
開始も終了も、濃くてゆるい感じの浅草を体験できたような気がします。