御柱祭がおこなわれる諏訪大社(すわたいしゃ)は、日本でもっとも古い神社のひとつ。全国各地にある諏訪神社の総本社です。
上社本宮・前宮、下社春宮・秋宮という4つのお宮がありますが、それぞれ場所が違います。諏訪湖周辺の諏訪市・茅野市・下諏訪町という広範囲に点在しているのは、全国でもめずらしいのではないでしょうか。
このお宮の社殿それぞれの四隅に、モミの巨木を建てるための一連の行事、そして宝殿の造り替えが御柱祭、正式には「式年造営御柱大祭」です。
平安初期、桓武天皇(781〜 806)の時代には盛大におこなわれていた歴史があり、今も諏訪地方がひとつになって熱く盛り上がるお祭りです。
御柱祭は御柱を山から引き出す「山出し」と、お宮まで街中を曳行する「里曳き」で日程が分かれています。
「山出し」は上社が4月2日(土)〜4日(月)、下社が4月8日(金)〜10日(日)、「里曳き」は上社が5月3日(火・祝)〜5日(木・祝)、下社が5月14日(土)〜16日(月)です。
「山出し」と「里曳き」、どっちを見るべきか、上社と下社どちらを見物するのがよいか、それぞれ3日ずつある日程のいつ行くのがいいのか。
たくさんの選択肢があるので、迷ってしまいそうですね。
御柱が鈴なりに若衆を乗せたまま急斜面を滑り落ちる勇猛果敢な「木落し」は、4月の「山出し」でおこなわれる行事。
朗々と唄われる木遣りと高まる緊張感。御柱が走り始めると、振り落とされる乗り手がいたり、それでも負けずに再び柱に飛び乗る人がいたりと、手に汗に握る迫力です。
この「木落し」は、上社と下社で違いがあります。
まず上社木落し坂は斜度27度、全長約30m、下社の木落し坂は斜度35度、全長約100m。
急坂で全長が長いため、迫力があるのは下社の木落し。ニュース番組では、ほとんどが下社の木落しを放映しています。
一方で、上社は駅から徒歩圏内というアクセスの良さと、上社の「山出し」のクライマックス「宮川の川越し」を、木落しの後に見ることができるのが魅力です。
迫力を取るなら下社、「宮川の川越し」も楽しみたいなら上社といったところでしょうか。
木落し見物は、有料観覧席の予約が必要です。現地で適当に見える場所を探そうと思っても、大混雑のため身動きが取れなくなりますのでご注意を。
公式サイトによる個人向けの観覧席は既に完売していますが、各旅行会社で出ているツアーや、トラビスジャパンが販売する観覧席(上社のみ、ローチケHMVで購入が可能)は、まだ残席があるようです。
観覧席の受付から木落しまで3時間ほどかかるため、防寒着やお弁当、おやつを持参したほうがよいでしょう。木落し坂まで距離があるため、オペラグラスや双眼鏡で見るのもよさそうです。観光協会の人に聞いたところ、売店などで販売している「おんべ」を持って行くのもおすすめだそうです。「おんべ」とは、棒に飾りをつけたもので、御柱の乗り手が手に持っているもの。一緒に振れば、乗り手との一体感が高まり祭りをもっと楽しめそうです。
豪壮な「山出し」から一転、5月におこなわれる「里曳き」は華やかな雰囲気に包まれます。
人の力のみでゆっくりと諏訪の街中を進む御柱に加え、神賑わいと呼ばれる騎馬行列や長持行列、花笠踊りが次々と現れるようすは必見。1箇所で待っていれば、さまざまな行列見物が楽しめます。
クライマックスは、いよいよお宮の四隅に御柱が建てられる「建御柱」。
「おんべ」が力強く振られるなか、ゆっくりゆっくりと立ち上がり、大観衆からの歓声に包まれながら巨木は神となります。
御柱祭に向けて、御柱街道の家々は曳行する氏子たちに振る舞うための御柱貯金をしたり、振る舞い用の料理教室に参加して特製の料理を用意したり。諏訪の人たちはさまざまな準備を重ねます。御柱祭はこの地の人にとって特別なもの。
「建御柱」で幕を閉じる「里曳き」は、街中を通ることで諏訪の人々の熱い思いを感じさせてくれるのが魅力となっています。