埼玉県きっての景勝地・長瀞に位置する寳登山神社(ほどさんじんじゃ)。
「宝の山を登る」という縁起のよい名前のとおりに登拝すれば、なんだかいいことがありそう。そこで、都内から日帰りで山頂の奥宮を目指す1日トリップを楽しむことにしました。
汗ばむほどの陽気に恵まれた、1日トリップ当日。10時半すぎに長瀞駅を出発し、まずは麓の神社を目指します。
秩父鉄道長瀞駅から寳登山神社へは、1本道。国道沿いに建つ大きな鳥居をくぐり、ゆるやかな坂道を登る徒歩15分ほどの道のりです。
数件のカフェや体験工房を通り過ぎ、のどかな道を歩いて行くと、突き当たりが神社の境内。砂利が敷かれ、二ノ鳥居が立っています。
鳥居の手前には、創業80年余の秩父味噌の店、新井武平商店の売店もあるので、休憩がてらのぞいてみるのもおすすめです。
関東地方には、ヤマトタケルにゆかりのある神社が多数ありますが、寳登山神社もそのうちの一社。
およそ1900年前、東国地方平定のために軍勢を率いていたヤマトタケルは、当地で山火事に襲われました。あわや、というときに猛火に飛び込んで荒れ狂う炎を消し止めたのは、白と黒の2頭の犬。山火事のあと、犬たちは山頂に一行を導き、姿を消したのです。2頭の犬を神の使いと信じて、この山を「火止山(ほどやま)」と名付けて、神さまを祀ったのが寳登山神社のはじまりです。このことから火災盗難よけ、諸難よけの守護神として知られるようになりました。
災難から守ってくれますように、と拝殿で手を合わせたら、二ノ鳥居前まで戻り「奥社登山道」の看板に従って、遊歩道へ。宝登山は標高497m。ロープウェイでも登ることができますが、徒歩約50分で登れるようなので歩くことにしました。
看板によると奥宮への道は「埼玉県指定の遊歩道」だそう。なだらかで幅が広い道は、山道というより遊歩道という表現がぴったりくる歩きやすさ。スニーカーでも問題なく登ることができます。
ただし、道に変化がないためか登る時間が長く感じられるのがつらいところ。
時節、木々が切れ眼下に景色が広がるスポットがあるのが気分転換になります。景色を見て高度が上がってきていることを確認しつつ、休み休み登ったら山頂付近にある動物園の建物が見えてきました。さらにそこから、5分ほど。ツツジの間の階段を上ると奥宮に到着します。
神社創立ゆかりの地は、天をつくような木々に守られた静かな空間で空気もひんやり。少し上がった息を整えてから参拝します。
参拝した後は、社殿の前の売店で今回の目的のひとつにしていたご朱印をいただきます。
この「神さまの山で1日トリップ」企画で、山頂に鎮座する奥宮を巡ってきましたが、社が閉ざされ人気もなくご朱印を受けられず「せっかく登ったのに」と残念な思いをしたこともありました。寳登山神社の麓の社務所でも、奥宮には「誰もいないこともある」とうかがっていたので、今回はちょっとした幸運です。「宝の山」の「宝」とは、このことだったのかもしれません。
奥宮参拝とご朱印という2つの目的を果たしたら、奥宮からすぐの山頂で少し休んで、ロープウェイで下山。昼過ぎには駅周辺に戻ることができました。
朝から参拝すれば、午後はまるっと秩父で遊ぶこともできるお手軽ハイキング。自分だけの「宝」を探しに登ってみてください。