「神話の神社を歩く~天岩戸編」で紹介した宗像大社(むなかたたいしゃ)は、交通安全の守護神としても知られています。
宗像大社でお祀りする三柱の女神さま、宗像三女神は、日本書紀に別名が道主貴(みちぬしのむち)と記されています。「貴(むち)」は、最も高貴な神さまの称号なので、「道の主=すべての道の神さま」ということになります。
宗像大社が鎮座するのは、中国や朝鮮半島にもっとも近く古代日本にとっての交通の要所。大和朝廷をはじめ、遣唐使も海路の安全を祈願してきたそう。なんと二千数百年もの昔に交通安全を願った石製の人形(ひとがた)、馬形、船形が宗像大社に残されています。
古代から道の神様として崇敬を集めてきた宗像大社の御神徳は近代にも伝わり、鉄道が通れば鉄道関係の人々が、車社会になるとドライバーたちが、交通安全を祈願してきました。
ちなみに、今やどこの神社でも授与している交通安全のお守りは、宗像大社が発祥だそう。
お守りが作られたのは昭和38年(1963年)。
今も当時と変わらぬデザインで授与されています。
交通安全の守護神として知られる神社は、古くは航路の守護神として崇敬を集めてきたケースがあります。
和布刈神社(めかりじんじゃ)も、そのような神社の一社。
九州最北端、関門橋のすぐ脇に鎮座し、古くから航海安全の神さまとして知られてきました。
御祭神は、第一座に比賣大神(ひめのおおかみ)。宗像大社と同じ宗像三女神と同一神のため、交通安全のご神徳があります。加えて第五座には海を司り、航海安全の御神徳が知られる安雲磯良神(あずみいそらかみ)も鎮まられています。
この安雲磯良神は、神功皇后の三韓出兵で水先案内人をつとめた神さま。
そもそも和布刈神社は、人皇9年(200年ごろ)、神功皇后が三韓出兵の帰りに自身を神主として西門鎮護のために祀ったことにはじまります。
いま、目の前の関門海峡には関門橋かかりましたが、行く道を守護するという御神徳は変わらず、新車購入時などの交通安全祈願で人気の神社となっています。
3兆円以上の売り上げをたたき出すタイヤの世界最大手メーカー、ブリヂストンは福岡県久留米市が発祥。今も久留米市や鳥栖市などにタイヤ工場が運営されています。
同じ久留米市内にあり、タイヤ工場をお膝元に抱えるのが筑後国一宮高良大社(こうらたいしゃ)です。
高良大社は、仁徳天皇55年(367年)または78年(390年)に鎮座され、履中天皇元年(400年)に社殿が造営されたと伝えられる古社。歴代皇室の崇敬も篤く、鎌倉時代までは社殿の造営などはすべて勅裁によりおこなわれてきました。
御祭神の高良玉垂命(こうらたまたれのみこと)は、「生活全般をお守りくださる神さま」であり、交通安全の御神徳も伝えられています。
お隣の鳥栖市は九州自動車道と長崎自動車道が交差し、九州新幹線が南北をつらぬく、九州最大の交通の要所なので、自動車道をよく利用する人の交通安全祈願にもぴったりです。