石原慎太郎都知事が1999年の初立候補時に選挙公約として掲げた「お台場カジノ構想」を覚えていますか?2003年に東京都は構想の断念を発表しましたが、その経済効果や集客効果には大きな期待がもたれているため、今も検討が続けられているそうです。関東地方の11月のイベントとして酉の市が定着したのも、実はギャンブルの期間限定解禁がきっかけ。酉の市誕生の地は、東京都足立区花畑の大鷲神社(おおとりじんじゃ)。『足立史談』によると、11月の酉の日に鷲大明神(現在の大鷲神社)に詣でる祭礼があり、市が立っていたそうです。より人を集めるために市の日に賭場の許可がおりたことが、江戸っ子たちに人気を呼び酉の市ブームが起こりました。「お金持ちは船で、武士は遠乗りをかねて馬で、庶民は歩いて花畑までやってきたようです」とは、大鷲神社の宮司さん。でもなぜ、熊手ベースの縁起物が作られたのでしょう? 「花畑は江戸から離れた農地だったので、元々売られていたのは農具。それでは江戸っ子に受けないから『福をかきこむ熊手』として掃除用具の熊手に縁起物を付けたのが縁起熊手の始まりです」。縁起熊手はきっと大ヒットを飛ばしたのでしょう。発案者はわかりませんが、現代にしっかり定着していることを考えれば21世紀の売れっ子クリエイターも真っ青な企画力ですね。
今や酉の市のメインと言えば縁起熊手。露店がずらりと並び、呼び込みの威勢のいい声で活気ある雰囲気に包まれます。「大きな縁起熊手は値段交渉するのが通例で、お客さんが『買った=勝った』、露店商が『負けた』とやりとりすれば交渉成立。値切った金額をご祝儀として渡すのが、江戸っ子らしい粋とされていました」と大鷲神社の宮司さん。ご祝儀を渡した人には、露店商が福の神が飛んできそうな生きの良いかけ声で手締めをしてくれるのも酉の市の名物です。大きな熊手は不要という人は、手のひらサイズの小さなものも並んでいるのでご安心を。また、露店商で売っているものだけでなく、社務所に授与品として熊手を用意する神社もあります。こちらは、祈祷を捧げてありお札と同様の意味を持つ神聖なもの。どちらも福を招くアイテムなのでお好みでチョイスしてください。
花畑の大鷲神社の酉の市は「まわりに商店が一切ない田舎ですので、のんびりした昔の酉の市の雰囲気を楽しめますよ」と宮司さん。各神社によって酉の市の雰囲気が少しずつ異なるので、お気に入りを見つけてみるのも楽しそうです。有名な酉の市としては、下町のお酉さまと江戸時代から親しまれている浅草の鷲神社(おおとりじんじゃ)や、山の手のお酉さまと言われる花園神社(はなぞのじんじゃ)の酉の市。露店数や参拝者数も多く、活気を味わいたい人におすすめです。子どもと楽しめそうなのが、埼玉の鴻巣市にある鴻神社(こうじんじゃ)。こちらは11月の酉の日ではなく、毎年恒例で12月4日の開催。餅つきや子ども囃子連の演奏、福くじなどたくさんのイベントが予定されています。2011年の11月の酉の日は、2日(水)、14日(月)、26日(土)の3日間。来年の招福や商売繁盛を願う人は、訪れてみてはいかがでしょうか?