「一宮」は、昔の日本の国々のなかで、もっとも社格が高いとされた神社。朝廷や国司が定めた制度的なものではなく、由緒ある神社や、信仰の篤い神社が、人々に崇められるようになり、一の宮、二の宮、三の宮と順位がつけられました。人々の崇敬を集めただけあり、訪れて楽しい神社が多いのがポイント。国宝級の社殿や参道に名物店がある神社や、広大な境内に自然がたっぷり、氏子さんたちに今も大切にされているのがわかるような神社、境内は大きくないけれど不思議な伝説が残っている神社・・・。王道から通好みまでバラエティ豊かな楽しみ方を見つけることができます。一宮を訪ねるなら、神社のスタンプラリー「御朱印」集めをスタートするのがおすすめ。御朱印は、御朱印帳という専用のブックに、各神社の社務所で朱印と墨書を書いてもらうもの。日付と神社名が記されるので、アルバム代わりに見返せるのも魅力です。「行きつけの店ならぬ行きつけの“マイ”神社に出会いたい」「ちょっと通な神社へ行きたいけれど、どこがいいかわからない」という人は、御朱印帳片手に一宮さんぽへでかけてみましょう。
千葉県の安房神社(あわじんじゃ)は、房総半島の南端あたりに位置する安房国の一宮。神武天皇が初代の天皇として即位された年、西暦では紀元前(!)660年に鎮座したと伝えられています。平安時代には、宮廷から遠く離れているにもかかわらず霊験あらたかな神社として、国から手厚い祭祀を受けていました。安房神社が鎮座するのは、海から少し離れた山際のエリア。住宅街を抜け、畑が広がる場所にすっと1本の参道が通っています。白い3つの社をくぐると、とてもきれいに掃き清められた社務所や本殿のあるエリアに。背後には吾谷山、境内には神池。山にはサルの群れが住み、池にはカモが遊びにくる自然豊かな環境だそうです。安房神社で、体験したいのが「お水取り・お砂取り」。お祓いを受けてから、吾谷山から湧き出る山水と境内の清浄な砂をいただけます。住まいなどを清めてくれる水と砂は、参拝のよいおみやげになりそうです。
富岡製紙工場で栄えた、群馬県富岡市にある一之宮貫前神社(いちのみやぬきさきじんじゃ)は、上野国の一宮。2万6千坪の境内を持ち、一度登ってから下る、めずらしい参道を持っています。一之宮貫前神社で見逃せないのが、社殿群。徳川家光の命により建造された拝殿は、極彩色の文様やすかし細工が施され華やかな雰囲気。拝殿、楼門は国指定の重要文化財。宝物館には、同じく国指定重要文化財の鏡「白銅月宮鑑」「梅雀文様鏡」「竹虎文様鏡」が納められ、見どころのオンパレードです。また、巨木好きにはたまらないのが樹齢1200年の大杉や樹齢1000年のブナ科のスダジイ。大杉は、平将門討伐のため出征する藤原秀郷公が戦勝祈願をして歳の数だけ杉を奉納し、そのうちの1本が今も立っているといわれています。帰りは旧一宮市街を見渡す大鳥居からの景観を楽しみましょう。